手塚治虫の芸術

手塚治虫の芸術 の詳細

ヘレン・マッカーシーという人物を知らなかったわけですが、手塚治虫の作品や人生をこんなにも詳しく解説できることに驚きました。詳述している内容は物凄く深くまた丁寧で分かり易いものでした。オールカラーで、写真や図版も豊富で、眺めているだけで楽しい著作物です。手塚治虫の膨大な作品を俯瞰して見る上でも画期的な著作が、外国人の方から生まれたこと自体に興味を覚えました。奥付の「著者」の紹介欄を紹介の為に引用いたします。このように書かれていました。ヘレン・マッカーシーは「欧米を代表する日本文化の研究家で、多数の著作がある。雑誌『Anime UK(アニメUK)』を創刊し、バービカン・センターで手塚のアニメ作品の上映会を催した。『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙は、「ヘレン・マッカーシーは英語圏の人々に日本のマンガとアニメのすばらしさをほぼ独力で伝えた」と評している、とありました。その通りですね。当方も手塚治虫の大ファンで40数年前に発行されたかなりの作品群を大切に保管しています。それでも知らない事の多さに気付かされたわけで、若い世代の方には手塚治虫作品の膨大な全容を本書で知ってほしいですし、その生涯の歩み(実に貴重な写真が多く掲載されています)をたどってほしいと願っています。一定の人気が出る以前の最初期の作品などを目にすることはありませんので、それらにも関心を持ちました。巻頭に大友克洋氏が次のように述べていました。少しご紹介します。「手塚治虫が日本漫画の嚆矢ではない。それ以前にも、同時期にも漫画家はいた。しかし、手塚作品は漫画表現を映画的にする事によってストーリーの娯楽化、多様性を確立し、ある時代の日本漫画の基礎を作ったと言える。」と定義しています。「世界のコミックを見ても、短期間にこれだけジャンルとして成長した例を他に見ない。それは手塚治虫の絵に依るところが大きい。」と言いきっていました。そのような位置づけがされていました。本書では、ほとんどの全てと言ってよいほどの作品が紹介されています。01章若き日の手塚治虫―写真で見るその人生、02章キャラクター紹介―スターシステム、03章ロケットマン、04章少年少女のための冒険ファンタジー、05章すばらしい新世界―1960年代、06章苦悩のとき―1970年代、07章晩年の活躍―1980年代、08章失くしたもの―未完成の作品、09章手塚治虫という遺産、という流れです。代表作「火の鳥」も48ページと49ページ、146、175ページなどで紹介してありました。本当はもっと詳しく述べたいでしょうが、多くの作品の紹介に努めていました。個人的には最初にリアルタイムで読み進め、今も大切にしている『0マン(ゼロマン)』の解説ページに特に関心を持ちました。147ページにその作品の位置づけがなされていますが、的確で詳しく、本当に勉強になることばかりでした。「ライオンブックス(新)」にも195ページで触れてあり、その正確な記述は、手塚治虫事典の様相を呈しています。ヘレン・マッカーシー恐るべし、です。